1 ご家族が逮捕されてしまった方
ご家族が逮捕されてしまった方に対して、逮捕された場合の手続き、弁護士に委任をするメリット等についてご説明します。
(1) 逮捕後の手続き
まず、逮捕をされると、警察署等にて最大72時間の身体拘束がされます。
その後、勾留がされると、勾留請求の日から10日間身体拘束がされます。
さらに、勾留延長がされると、最大でさらに10日間身体拘束がされます。
そのため、逮捕された時点から、最大で23日間、身体拘束がされることになります。
その間、検察官は、その事件について、どのような処分をするのかを検討します。
大まかに①不起訴、②略式起訴、③正式裁判の3つの処分方法があります。
①不起訴 とは、犯罪の立証が難しい場合(証拠不十分や嫌疑不十分)や、犯罪の立証はできるけれども事件の大きさや反省の態度等から起訴をしない(起訴猶予)という判断です。
②略式起訴 とは、犯罪が重大でないような場合で、被疑者の同意を得られる場合に、正式裁判を行わずに罰金判決を受けることにする迅速な手続きです。
③正式裁判 とは、いわゆる普通の刑事裁判を行う手続きです。
検察官は、上記の身体拘束期間中に、捜査を行い、上記①~③のどの処分をするのかを検討します。
なお、捜査をしたものの、上記①~③の処分を行わずに釈放する(④処分保留による釈放)ということもあります。
逮捕後の手続の流れ
- 逮捕
- 最大で78時間
- 勾留(しない場合もある)
- 最大10日間
- 勾留延長(しない場合もある)
- 最大10日間
- 終局処分の決定
- ①不起訴、②略式起訴、③起訴(正式裁判)、④処分保留釈放
(2) 弁護士に委任するメリット
ア 刑事手続の流れや事件の見通しの説明
逮捕されてしまうと、被疑者は外部の人間と自由に連絡を取ることができなくなります。
複雑な刑事手続の流れについては、弁護士が説明をすることで、被疑者の方の不安感を解消することができます。
また、事件が今後どのような結果になりそうかという見通しを正確に立てなければ適切な弁護活動はできません。
しかし、この見通しについては、経験を積んだ弁護士でなければわかりにくいのが現状です。
そこで、弁護士にご依頼をいただければ、これらの点について、丁寧にご説明することが可能です。
イ 被害弁償や示談の実施
事件によっては、被害者となった方との間で、示談を成立させたり、被害弁償を完了させることが、重要になることがあります。
この点、捜査官は示談をすることに協力しませんし、ご家族の方が代わりに示談の交渉などをすることは現実には困難です。
そのため、弁護士にご依頼いただければ、こうした示談等を迅速に行い、適切な弁護活動を行うことができます。
ウ 身体拘束からの解放や接見禁止の解除等の実施
弁護士にご依頼いただくことで、身体拘束からの解放に向けた活動を行うことができます。
具体的には、勾留決定についての準抗告や、保釈請求をすることができます。
本来、勾留というのは、
罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること(刑事訴訟法60条1項柱書)のほか、
①定まった住居を有しないこと(同項1号)、
②罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があること(同項2号)、
③逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があること(同項3号)、
のいずれかの要件をみたさなければ実施できないと法律に定められています。
しかし、実務上は、とてもカジュアルに勾留の決定がされておりますので、弁護人は、上記の要件を満たしていないことなどを理由に、勾留をやめるように申立てをすることができます。
また、正式裁判が始まった後には保釈の請求をすることもできます。
保釈とは、簡単に言えば、罪証を隠滅したり逃亡をしたりするおそれがないことなどを理由として、裁判が終了するまでの間、身体拘束から解放することをいいます。
保釈の場合には、保釈保証金というお金を裁判所にいったん預ける必要があります。
これは、保釈中に逃亡などをしなかった場合には全額返ってきます。
また、保釈中は、どこで生活をするのかや、誰の監督下で生活をするかなどを裁判所に通知し、裁判所の指示に従って生活をする必要があります。
弁護人に依頼をしていただけますと、これらの身体拘束からの解放に関する請求をすることができます。
なお、こうした各請求を実施している弁護士ばかりではありません。刑事弁護にもトレンドのようなものがあり、最近の刑事弁護の勉強をしていない弁護士は、上記のような請求に消極的な傾向があります。
2 国選弁護人と私選弁護人
(1) 国選弁護人制度とその問題点
国選弁護人という言葉を聞いたことのある方も大勢いらっしゃると思います。
国選弁護人とは、国が税金でつけてくれる弁護士のことです。
現在は、すべての事件で、勾留が実施された場合には国選弁護人を付けることができることになっておりますので、希望をすれば、無料で、弁護士をつけることができます(逮捕段階では国選弁護人はつきません)。
もっとも、国選弁護人とは、弁護士会が作成した名簿の順番に基づいて機械的に割り振られることになるという性質上、どのような弁護士がつくかはランダムになってしまいます。
国選弁護人は、私選弁護人と同様に、最善の弁護活動をすべき義務を負っているため、特段問題のある弁護活動をするとは考え難いのですが、人間的な相性が合わない等の問題が生じることもあります。
ところが、一度就任した国選弁護人を他の国選弁護人に変更することは原則として不可能です(私選弁護人に変更することは可能です)。
そこで、国選弁護人ではなく私選弁護人を選んで依頼をするということお勧めします。
(2) 私選弁護人に依頼をするメリット
私選弁護人に依頼をするメリットとしては、どの弁護士に依頼をするかを依頼者側(被疑者やそのご家族)で自由に決められることが挙げられます。
刑事事件は人生に大きな影響を及ぼすものですから、心から信頼のできる弁護士を見つけて依頼をすることが重要だと思います。
実際に依頼することまではしなくとも、一度だけ相談をするなどして相性を確認してからご依頼をしていただいても結構です。
3 面会や差入れについて
身体拘束されている方についての、面会や差入れについて解説します。
その他詳細は、身体拘束期間中の諸問題をご参照ください
(1) 接見の方法
弁護士以外の方は、被疑者の方と自由に面会をすることができません。
まず、1日につき1回、15分間しか面会ができません。
ここにいう1回というのは、被疑者の方にとって1回という意味ですので、同じ日に、ご友人が接見をしていた場合には、その日にご家族の方が接見をすることはできません。
また、捜査をしているという理由で面会を断られることもあります。
取調べをしていたり、捜査のために遠方に出ているような場合では、せっかく警察署まで足を運んだのに会うことはできないこともあります。
そして、弁護士以外の接見では、捜査官が面会に立ち会い、会話を隣で聞くことになりますので、とても話をしづらいとお感じになる方もいらっしゃいます。
(2) 差入れの注意点
警察署等での生活はとても不便です。着替えすらもあまり用意されません。
被疑者の方に対する差入れをすることができますが、以下の点について注意をする必要があります。
まず、食べ物や薬など、口に入れるものは一切差入れをすることはできません。
多くの方に驚かれるのですが、常備薬さえも一切禁止されます。(なお、コンタクトレンズはギリギリセーフのようです)。
薬が必要な場合は、外部の病院や留置施設内で医師の診察を受けて、処方してもらうことになります。
どんなものを差入れしたらいいの?
逮捕されるときは、着の身着のままであることがほとんどです。
そのため、服も下着も現金も持っておらず、時間をつぶすものも特に持っていないことが多いです。
そこで、①下着類、②服、③漫画・本・雑誌などの差入れは喜ばれることが多いです。
また、警察署内で食べ物や物品を購入することもできますので、④現金の差入れも喜ばれます。なお、一度に差入れできるのは3万円までです。
外部の人と連絡を取る手段として、⑤便箋と切手をたくさん差入れすることも喜ばれます。
経験談
ヒゲが伸びるのがものすごく早い人で、警察署内の髭剃りでは文字通り歯が立たたずモジャモジャになってしまった方のケースで、例外的に「電気シェーバー」の差入れが認められたことがあります。
自傷行為に使用できるものですので、基本的には認められないと思いますが、このように事情によっては気をきかせてくれることもあります。
(3) 接見が禁止される場合
オレオレ詐欺のような組織犯罪や薬物犯罪など暴力団との関係がありそうな事件や共犯者がいる事件では、高い確率で、接見が禁止されます。
接見禁止とは、弁護士以外の者の接見をすべて禁止し手紙なども送れなくする処分です。
これがされてしまうと、事件とは全く無関係なご家族であっても、接見をすることができなくなってしまいます。
ところが、弁護士が接見禁止の一部解除の申請を行うことで、ご家族の方だけの面会を認めてもらえるようになる場合があります。
裁判所の判断によりけりですが、ご両親などであれば比較的接見を認めてもらいやすいようです。
4 よくある質問